見えていなかったものの重要性
■グリア細胞
人間の脳には神経細胞(ニューロン)が2000億個あると言われている。ニューロンは脳の活動の中心であることは疑いようがない。
ところで、実は脳の中には、グリア細胞というものがあり、ニューロンの10倍もありそうだということが分かってきた。これまでグリア細胞は脇役だと考えられていたが、どうやら成長因子や栄養因子を分泌しており、ニューロンの成長や維持にとても大切なものであることが判明してきた。云わば、スポーツ選手を支えるコーチや栄養士のようなものである。
■ダークマター
一方、宇宙空間では、ダークマターというものが注目されている。ダークマターとはその名の通り、暗黒物質という意味である。
目には見えないが確実にあるはずの物質である。宇宙にある物質を全部で100%とすると、通常の物質が15%、ダークマターが85%あるらしい。ダークマターの正体はまだ解明されていない。陽子と陽子を高速で衝突させて、その時に飛び出す粒子がダークマターと関係しているとも言われている。
■ダークマターの役割
このダークマターも宇宙の形成にはかかせないもので、宇宙が出来てから138億年であるが、初期の頃は一様な分布だったものが、微妙なゆらぎでダークマターがあるところに重力が生まれ、そこに物質が集まり銀河ができた。結果的に、宇宙には銀河がたくさん集まる密なところと疎なところができた。これは銀河の泡構造と呼ばれている。
また、銀河の外側にある星が、予想以上の回転速度でが出ているにもかかわらず、遠心力によって外へ飛び出していかないのは、ダークマターのおかげと言われている。まさに宇宙形成における黒子である。
参考までに太陽系の銀河系内での回転速度は240km/sである。
引用:国立天文台
■グリア細胞とダークマターの共通点
もう一点付け加えると、平均的な銀河内の恒星の数は2000億個と言われている。偶然だが、一人の人間の脳内のニューロンの数と一致している。
さて、ここから妄想コーナーになるが、グリア細胞とダークマター、どちらもこれまで見えていなかった(気にしていなかった)ものが、同時期に解明されつつあるのも、そこに何か見えないリンクを感じずにはいられない。
グリア細胞とダークマター、どちらも本来気付いてもらえないような黒子である。しかしながら、その重要性が分かってきた。
例えるなら、ドーナツの真ん中の穴のようなものである。真ん中に何も無いが故にドーナツたることができる。グリア細胞があるが故の脳であり、ダークマターがあるが故の宇宙なのである。禅問答じみてきたが、これが真実のような気がする。無用の用、万歳。そして黒子達に感謝。
(おわり)