ロシア補給船打ち上げ成功とか新型ロケットH3とか
ロシアの補給船「プログレスM-28M」の打ち上げ成功のニュースがありました。ここ最近、ロケット打ち上げ失敗が続いていた中で、明るい話題となりましたね。あとは、無事にISS(国際宇宙ステーション)にドッキングしてくれることを願うのみです。前回は、ドッキング時に制御不能となってましたから。また今回の成功により、7月23日に予定されているソユーズ打ち上げにもはずみがついたことでしょう。ソユーズには油井宇宙飛行士も搭乗者に含まれています。
油井さんのtwitterはこちら↓
油井 亀美也 Kimiya.Yui (@Astro_Kimiya) | Twitter
また、JAXAの新大型ロケットの名称も「H3」に決まりましたね。これは、これまでの「H2A」や「H2B」の長さを凌ぐ全長63mをもつということです。愛称も検討しているということなので、どんな愛称がつくのか楽しみです。
小惑星ケレスの光る点についての続報
少し前に、小惑星ケレスに光る2つの点が観測されたというのを書いた。
小惑星ケレスに光る2つの点が見つかる。そこに何があるのだろう。 - 宇宙や生命について考えたことを書いてみる
ケレスについては、ここ最近ずっと気になっている。探査機ドーン(Dawn)は2015年3月にはケレスの周回軌道に入っていて、写真を続々と送ってきてくれている。
写真.ケレスの光る点(引用元:NASAジェット推進研究所)
以下、NASAのドーンのサイトの記事
JPL | Blog | Mysteries Unravel as Dawn Circles Closer to Ceres
これは、ドーンが2015年5月16日に撮影したもので、ケレス上空7,200kmから撮影したものである。前回の写真では大きな2つの点に見えたが、実はいくつもの点が集まっているようだ。まだ成分は分かっていないようだ。NASAもはっきりしたことはさらに分析してみないと分からないということで、公式な見解は今のところ無いようだ。
ケレスの話ではないけれど、実は似たような話は月でもあるらしい。
月面で謎の発行現象が何件も観測されている。それらは、「つかの間の月の現象(Transient Lunar Phenomena,TLP)」と呼ばれている。
以下、参考リンク
「月のミステリー 奇妙な発光現象の正体は?」(2015月4月9日) | コズミックフロント☆NEXT | NHK宇宙チャンネル
どうも、月内部にあるガスが何らかの原因で噴出し、それらに太陽光があたり光っているとのことらしい。
そうであるならば、ケレスにも同様のことが起きていると考えても不思議ではない。ただ、ケレスのほうは四六時中常に光っているようなので、そうだとするとガスがずっと噴き出している必要がある。死んだように見える星でも実は生きているんだということを思い知らされる。もう一つ思うのは、太陽系に存在する僕らにとって、太陽がいかに大切なものであるかということである。太陽の大きさは地球の約100倍(正確には109倍)である。僕らがよく目にする太陽系の模型は惑星が分かりやすいように大きくしてあるが、実際の縮尺で模型を作ろうとすると、でかい太陽ばかりが目立ってしまい、惑星は小さすぎてどこにあるか分からなくなる。(実際にそういった模型をつくってみるのも面白いかもしれない)
少し脱線したが、ケレスの話に戻ると、光る点が氷だとしてもガスだとしても、宇宙の解明に一歩近づくことは間違いないと思う。解明を待ちたい。
(おわり)
<閑話休題>レトロゲームのキャラ達が地球侵略!?
最近、映画「ピクセル」の予告トレイラーが流されるようになりましたね。レトロゲームのキャラクター達が地球に侵略してくるというストーリーだそうです。トレイラーを観てみると、パックマンやインベーダー、ドンキーコングなどが登場しています。ある意味、ゲーム黎明期のキャラクター達で、おなじみのキャラクター達です。ちなみに、映画と直接関係ないと思いますが、アメリカの「遊びの博物館(National Museum of Play)」で、新設するビデオゲームコーナーで展示するゲームの最終選考に残った15作品を紹介していました。
この中にも、パックマンやインベーダー、テトリスといった大御所は残っています。日本のキャラクターであるマリオやゼルダ、ポケモンも残っています。
ポケモン等のキャラクターは、さすがに今回の映画には版権の関係で登場しないと思いますが。
さて、これらレトロゲームと伴に育った?世代としては、楽しめそうな映画であることは間違いなく、日本での公開(9月)が楽しみです。インベーダーファンとしては、あの(例の都市名が付いた)撃ち方が登場するのか気になるところです(笑)
あと、映画の原案となった短編がYoutubeに公開されいますので参考まで。
PIXELS by Patrick JEAN (OFFICIAL BY ONEMOREPROD - HD) - YouTube
(終わり)
見えない物質ダークマターを観測する?!
XMASSと呼ばれる施設がある。エックスマスと読む。(クリスマスではないようだ)これは宇宙にダークマターが存在する証拠を見つけようというものだ。ダークマターとは光を出さない(見えない)物質という意味で、直接観測することができない。宇宙にある物質のうち85%がダークマターであると言われている。
(参考)ダークな話(前編) - 宇宙や生命について考えたことを書いてみる
図.XMASS検出器(引用元:東京大学宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設)
XMASSがあるのは、岐阜県飛騨町の神岡鉱山の地下1000メートルだ。神岡鉱山は、ニュートリノの検出で有名になったカミオカンデや重力波検出装置「かぐら(KAGRA)」がある場所だ。ちなみに、現在は、スーパーカミオカンデもあり、その次の構想としてハイパーカミオカンデというのもあるらしい。
(参考)重力について考えてみた(その2) - 宇宙や生命について考えたことを書いてみる
ダークマターを直接観測することはできないが、その痕跡を間接的に観測しようとしている。原理について詳しく書くつもりはないが、ちょっとだけ書くと、800トンの水を満たしたタンクの中に642本の光電子管の入った検出器が入っている。光電子管の中には液体キセノンが満たされており、その液体キセノンにダークマターがぶつかると光が出る。その光を観測することによって、ダークマターを検出しようという原理だ。
XMASSは2013年秋から本格的にダークマター観測を始めている。近いうちに朗報があるとよいですね。
(おわり)
(追記)
神岡の施設のサイトを見ていたら、「NEWAGE」というダークマターのやってくる方向を直接探索するプロジェクトの紹介もありました。もうここまできているんですね。
東京大学宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設
また、途中に書いたハイパーカミオカンデ構想のサイトはこちら。
「あけぼの」運用終了とか「はやぶさ2」の1回目の軌道修正完了とか
プラズマ圏観測衛星の「あけぼの」が2015年4月23日運用を終了した。1989年2月22日に打ち上げられてから約26年間も運用していたということで、これは予想よりかなり長期ということだ。
プラズマ圏といえばオーロラである。オーロラは太陽活動の産物で、明るいオーロラが頻繁に観られるということは、太陽も活発に活動していることになる。太陽の表面にある黒点の数は、11年周期で増減を繰り返しており、これは太陽の磁場が22年周期で反転することと関係がある。そんなことが分かってきたのも、あけぼのが26年もの長期間連続して観測を続けられたためである。
また、「はやぶさ2」が1回目の軌道修正を無事終えたというニュースもあった。この軌道制御はイオンエンジンを2015年3月3日から3月20日まで連続動作させて行っており、これはすなわちイオンエンジンも安定動作していることになる。はやぶさ2は順調に航行を続けている。この後、6月上旬に2回目の軌道修正を行い、今年12月3日に再び、地球に近づき、スイングバイを行う。スイングバイとは、天体の重力を利用して、衛星の軌道を変え、かつスピードアップしようというものだ。ちなみに、スイングバイによって減速もできる。
スイングバイすることによって、実は地球側は運動量をその分失っていることになる。まあ、微々たるものなので全く影響はないのだろう。はやぶさ2が地球のエネルギーをもらっていよいよ外界へ飛び立つと考えることもできる。はやぶさ2の旅の安全を祈願しています。
図.はやぶさ2のスイングバイ予定時期(引用元:YOMIURI ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/science/20150427-OYT1T50122.html
この記事を書くにあたって、「ファン!ファン!JAXA!」のサイトを参考にさせて頂きました。見ていて楽しいページです。はやぶさ2の特設サイトもあって、トピックスには“L+数字”という記号が振られている。この“L”はLaunch(打ち上げ)の意味で、その後の数字は打ち上げから何日目かを示している。
「ファン!ファン!JAXA!」サイトはこちら↓
http://fanfun.jaxa.jp/
はやぶさ2特設サイト↓
http://fanfun.jaxa.jp/countdown/hayabusa2/
最後に、あけぼのが撮影したオーロラをいくつか引用して、あけぼのの功績に感謝を表したい。特に、上側の写真はオーロラ・ブレイクアップと呼ばれる現象で、オーロラが急激に輝きを増す珍しい現象を捉えている。
図.オーロラブレイクアップ(あけぼの撮影)(引用元:JAXA)
図.オーロラ(あけぼの撮影)(引用元:JAXA)
(おわり)
将棋電王戦とは人類と人工知能の未来を示唆したイベントだったと思う
本記事の前に、将棋ソフトと人工知能について書いたこちらを読んで頂けると理解が深まるかと思います。
(過去のブログ)
人工知能について考えてみる(その1)※不定期ネタ - 宇宙や生命について考えたことを書いてみる
(写真引用元:朝日新聞デジタルWEBRONZAより)
■FinalのFinal
2015年4月11日、将棋電王戦Finalの最終局(第5局)が実施され、電王戦そのものの幕が閉じた。NHKニュースにも取り上げられていたので、ご存じの方も多いと思う。最終局は、ある意味衝撃的な結末で、なんと開始1時間足らずで終了した。結果そのものを書きたいわけではないので、ここでは割愛する。
■将棋ソフトの強さと弱さ両方を垣間見た
特に注目したのは、人間側(棋士)が勝った(コンピュータ側が負けた)局だ。電王戦Finalにおいては、人間側勝利が3局ある。そのうちの2局は、ある意味、力で勝ったというより、相手の弱点を突いて勝ったという感じだ。
■人類と人工知能の未来
かなり仮定の話だが、遠い将来、人工知能が人間社会のあらゆるところに入り込んでいたとする。もし仮にこれらの人工知能が自らの学習によって人間と敵対し始めたらどうしたらよいのか。そんなのは映画の中の話であって、現実はそうはならないよ、という声が聞こえてきそうだが、まあ、あくまでもそうなったらの話である。
人工知能は、機械学習やDeep learningといった手法によって自ら学んでいくことができる。つまり、学習の仕方をプログラミングしてやることによって、人工知能自体が自ら学んでいくのである。そして、さらに学習を重ねますますパワーアップしていく。つまり、始めは人類にとって役に立つシミュレーションを任せていたのが、そのうち、ネットを通し、人工知能同士が知識を共有し合い、いつかは人工知能にとって都合のよいシミュレーションを始めるかもしれない。その時、人工知能にとって、人間は単なる足枷でしかないかもしれない。人類は不要と結論づけるやもしれない。
■人工知能と戦うことになったら
人工知能が人間の能力を凌駕し、かつ人間と敵対(または人間を制御しようと)している状況になったら、当然ながら、人類側は、なんとかしてこの状況を打開しようとするだろう。この時、今回の電王戦の顛末が参考になる。
人間側が勝利した電王戦Finalの第2局、第5局が参考になる。どちらの局も人間がコンピュータ側の弱点を突いて勝利した。具体的には、第2局では、角不成の王手をコンピュータ側が認識せず、王手放置によりコンピュータ側反則負けとなった。また、第5局では、コンピュータ側が打った角を人間側が生け捕りにできる手順があった。この手順はかなり長手順のためコンピュータ側はそれに気づかず角を打ってしまうそうだ。
ここに人類側がコンピュータ側を出し抜くヒントがあるように思う。コンピュータ側の思考(シミュレーションプロセス)を詳細に分析すれば、コンピュータ側の検討漏れ部分を見つけることができる可能性がある。そこがコンピュータ側の弱点となるため、そこをピンポイントで突いて勝とうという作戦だ。
■人類側の長所、集合知
もう一点触れておきたいことがある。第5局の角生け捕り作戦がどうやって発見され、広まってきたか、ということである。実は真相は藪の中である。始めに発見したのは、アマチュア棋士ともプロ棋士とも云われている。ここでは、そこは議論ポイントではないので割愛する。とにかく、この作戦をネット将棋で誰かがやってみて、それを観戦していた人たちが、自分も試し、徐々に広まった。そして、あるチャレンジ企画(最強コンピュータソフトに勝ったら100万円企画。アマチュアだけが参加できる)によって、ある方が実際にこの作戦で勝利し、みごと100万円をゲットしたのである。このことによりさらに認知度がアップしたわけである。
ここにも、大きなヒントがある。人類側は、ある特定の人の発見を、またたく間に伝播させ、さらなる付加価値をつけ洗練させていくことができるということだ。まさに人類全体の集合知と云ってもよいだろう。この集合知によって、人類はいくらでも強くなるための武器を持つことになる。
■電王戦閉幕にあたり
4年間に渡って続いた電王戦。そして人工知能ついて考えるきっかけを与えてくれた今年の電王戦Final。最後にありがとう、そしてまたいつか会える日まで。。
(おわり)
人工知能について考えてみる(その1)※不定期ネタ
■将棋電王戦の話
ここ数年、注目している話題の一つに将棋電王戦がある。人間のプロ棋士とコンピュータ将棋のプログラムが本気で戦うイベントである。これまでは人間側の負け越しのようで、将棋連盟も本気を出し、事前の研究をしっかりやって対策を考え、気力も根性もある若手棋士中心のメンバ選抜をし、背水の陣で臨んでいるようだ。
■簡単に将棋の説明
将棋は9×9の盤面を使って、互いに8種類20枚の駒を使用するゲームだ。どちらかの玉を先に取った(厳密にいうと取る直前の「詰み」状態にすればよい)方が勝ちとなる。引き分けになる場合もある。長ったらしく云うと、「二人零和有限確定完全情報ゲーム」というカテゴリになる。
■将棋プログラムも人工知能?
さて、将棋プログラムの方だが、こちらは事前にプログラム同士のトーナメントがあって、そこを勝ち抜いてきた上位5つのプログラムが出場する。このトーナメントも毎年開かれ、年ごとに強いプログラムは異なる。一年経つとかなりの進化を遂げるとのことだ。
ここで云いたいのは、将棋プログラムもある種の人工知能だということだ。ある特定の条件に従って、最善の手を計算する。人間の「読み」をある意味ものすごいスピードでシミュレーションしている。
ここでのポイントは、シミュレーションするにあたってのルールが明確になっているということである。例えば、初めに指す初手について、先手側の指せる手のパターンは有限である。また、その次の後手の手も有限である。膨大な数かもしれないが、順番に指していく限り、全てのパターンを予測できることになる。イメージとしてはどんどん下に分岐パターンが拡がっていく感じである。上に伸びていくなら樹形図である。
そうであるなら、将棋プログラムでそのパターンを予め全部計算しておけばよいという話になる。
■コンピュータの計算能力
理論上は先に書いた通りなのだが、コンピュータの計算能力には限界がある。現在は早いものだとコンピュータを並列に並べてつなぐことにより、1秒間に何億手も読むらしいが、それでも10の220乗とも言われている指し手全パターンを読むには、天文学的な時間がかかってしまう。
■もっと少ないパターンならどうか?
ちなみに、○×ゲーム(三目並べ)というのがる。3×3のマスに○と×を交互に書いていって、縦横ななめどこか1列並んだほうが勝ちというものである。パターン数が小さければ、コンピュータで全パターン計算することは容易だ。ちなみに、互いに最善をつくせば引き分けになる。また、6×6盤面のオセロの場合、後手が必ず勝つパターンがあるという結論が出ている。不思議なもので、これが通常の8×8盤面のオセロになるとまだ結論が出ていないらしい。この辺りが、現在のコンピュータ性能の限界といったところだろう。また、動物将棋というのもある。こちらについての結論は知らない。
図.動物将棋
■コンピュータの仕組み(アーキテクチャ)を変えればよい?
現在のコンピュータはノイマン型と言われるアーキテクチャである。これに対し、量子コンピュータというものが研究されている。その名の通り量子を利用するものだ。ここでは本題ではないので詳しく書かない。とにかく、量子コンピュータであれば桁違いの計算量が期待できるので一気に計算スピードがあがる。ただし、研究中の量子コンピュータはそれほど長い時間動かすことができないらしい。技術の進化に期待したい。
■コンピュータでどこまでシミュレーションできるのか?
ここからさらに妄想を進めると、量子コンピュータを凌駕するような新しいアーキテクチャのコンピュータが出てきたら計算量はさらにアップするということだ。将棋の全パターン解明もできるようになるかも知れない。
ここまで考えてはたと気づくことに、この世界はあるルールに基づいて構築されているということだ。ある決まった法則(物理や化学)に則って宇宙は構築されている。例えば、地球生命のDNAは特定の方向の螺旋であるし、ある特定の同位体だけが安定して存在することができる。
要は、驚異的な計算能力を誇るコンピュータ(既にコンピュータではないかもしれない)があるとするなら、地球をもシミュレーションできるということにならないだろうか。ここから少し怖い妄想が湧いてくる。今、僕らが存在しているのもあるシミュレーションの一部ではないだろうかということだ。
(終わり)