星は丸いとは限らないようです(その2)
前回に引き続き、面白い形の天体を見ていこうと思う。
前回記事はこちら↓
まずは数年前に話題になったあの彗星です。
図4.チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(引用元:ESA/Rosetta/NAVCAM -CC BY-SA IGO 3.0)
図5.フィラエが撮影したロゼッタの太陽光パネルと16km先のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(引用元:ESA/Rosetta/Philae/CIVA)
図6.チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のサイズ
(引用元:ESA/Rosetta/NAVCAM; Dimensions: ESA/Rosetta/MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/SSO/INTA/UPM/DASP/IDA)
ちなみに、チュリュモフもゲラシメンコも人名である。どちらの方も旧ソビエトの天文学者だ。
欧州宇宙機関 (ESA) の彗星探査機ロゼッタがターゲットにした彗星で、2014年11月12日に着陸機フィラエを投下した。フィラエは史上初めて彗星に着陸した。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の匂いについて、こんな記事があった。
彗星67Pはかなり臭い、ESA 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
決していい匂いではないようですね。
最後はこちら。
図7.ベンヌ(引用元:NASA/Goddard/University of Arizona)
どこかで見たような形ですね。
実は、はやぶさ2が観測しているリュウグウにそっくりなんです。
どちらもそろばんの玉のような形をしている。お茶碗を2つくっ付けたような形とも云える。
ベンヌはNASAの探査機OSIRIS-REx(オシリス・レックス)がターゲットにしている小惑星だ。
オシリス・レックスは2016年9月に打ち上げられ、2018年12月3日ベンヌに到着した。この後、観測、採取を行い、2021年春にベンヌを出発、2023年に地球へと戻る予定だ。
はやぶさ2とほぼ同時期に目指した小惑星が、どちらも同じような形をしていたというところに何か運命めいたものを感じてしまう。
また、オシリス・レックスの観測によりベンヌに酸素と水素の原子が結合した水酸基(OH)の存在が明らかになった。水酸基があったということは、水が存在した可能性が高いということらしい。
ベンヌの直径は約560m。
さて、様々な形の小天体を見てきた。
このように見てくると本当に様々な形の星々があることが分かる。
そのうち本当にマンガで描くような星(★)形のものが見つかったら面白い。
さて、ここから先は少し考えたことを書く。
ここまで見てきた星は全て小さい。大きさのオーダーが数百m(メートル)から数十kmだ。地球の直径が1万2700kmあることと比べるとかなり小さい。ある程度の塊にならないと球形にならないということだ。小さい塊が集まって徐々に大きくなっていき、ある程度の塊になると重力も大きくなるため、さらに周りの物体が集まり始める。また、大きな塊がぶつかった衝撃で自転が生まれ、その回転によって球形になっていく。
少し考えてみると、小さい天体には2種類あるような気がする。つまり、球形の星ができる前の初期段階のもの(これを小天体αと呼ぶことにする)と星が爆発等で壊れた際にできる星のかけら(これを小天体βと呼ぶことにする)だ。前者(小天体α)を解析することで、星の出来方、ひいては宇宙の出来方が解明されていくのではないだろうか。また、小天体αとβの比率はどうなのだろうか。その比率は太陽系と他の恒星系では異なっているのだろうか。その比率が分かることで、その恒星系が時間軸上でどの辺りにいるのか分からないだろうか。
また、恒星の最後が爆発によって終わるのなら、その周辺には星のかけらが多くなる筈である。そこからまた、衝突を繰り返しながら星が出来ていくのだろうか。そうならば、小天体αと小天体βは互いに関連していて、その形態を繰り返すことになる。
新年早々のウルティマ・トゥーレのニュースで、その愛くるしい?雪だるま型の星を見ながら、宇宙に思いを馳せる2019年の始まりとなった。
(終わり)
星は丸いとは限らないようです(その1)
皆さま、新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
さて、新年早々、NASAから面白いニュースがあった。
探査機ニューホライズンズによってある天体が観測された。
それがこちら。
図1.Ultima Thule(ウルティマ・トゥーレ)(引用元:NASA/JHUAPL/SwRI)
図2.ウルティマ・トゥーレ(引用元:NASA/JHUAPL/SwRI/Sketch courtesy James Tuttle Keane)
面白い形をしてますね。2つの小さな塊が接触してできたもので、「コンタクト・バイナリー(接触連星)」というそうです。
長辺の長さは約32km。星ができる際の初期段階なのでしょうか。これからの解明が待たれるところです。
ニューホライズンズは冥王星を観測した後、さらにその先である太陽系の端へ向かっており、この天体はエッジワース・カイパーベルトにある小惑星だそうです。さらに凄いことにニューホライズンズはこの小惑星でフライバイしたとのこと。フライバイした日時は、日本時間2019年1月1日14時33分ごろというこで、新年早々面白いニュースでした。
さて、面白い形の天体と云えばこんな物も見つかっている。
図3.Oumuaua(オウムアムア)(引用元:ESO/M. Kornmesser)
(参照リンク:宇宙探検隊,オウムアムアとは何?歴史的な大発見!謎の葉巻型天体 | 宇宙探検隊)
オウムアムアというのは、ハワイの言葉で「斥候(せっこう、うかみ)」を意味する言葉だそう。「斥候」というのがまた聞きなれないが、敵を探ったり時には戦う、といった意味だそう。なんだか物騒ですね。急にオウムアムアが危険な物に見えてくる。
実はこのオウムアムアだが、始めは太陽系内の彗星かと考えられていたのだが、太陽の近くを通る際、コマ(太陽の熱で本体が昇華したもの)が無かったため小惑星に変更された。
さらに驚くことに、太陽系外から飛来したものらしい。これは、間近で観測された初めての恒星間天体ということになる。
こちらの長辺の長さは1km未満。
(続く)
Ryuguへ小型ローバーが着陸、写真も届く!
先日、はやぶさ2から投下された小型ローバー(MINERVA-Ⅱ1)が無事にRyuguに着地した。
世界初の小惑星表面からの画像はこちら。
(引用元:JAXA)
躍動感あふれる写真ですね。凄いの一言です。
なぜこのような写真となるかというと、この小型ローバーはジャンプ(ホッピング)しながらRyuguの上を移動するからである。バッタのようなイメージでしょうか。1回のホップで空中に飛び上がってから着地するまでに最大15分間ほど滞空し、水平方向に最大15mほど移動するとのことなので、バッタより滞空時間は長いですね。Ryuguの重力が小さいので滞空時間や移動距離も大きくなるのでしょう。
MINERVA-Ⅱ1紹介ページ(JAXA)↓
(引用元:JAXA)
また、はやぶさ2がMINERVA-Ⅱ1射出のため、Ryuguに近づいた時の画像がこちら。
(引用元:JAXA)
はやぶさ2自身の影がしっかりと映ってますね(写真左)。わくわくしてくる写真です。
さて、小型ローバーだが、今回射出されたミネルバⅡ1だけでなく、もう2機ある。そのうちの1つはMASCOTというもので、こちらもこれから射出される予定だ。移動方式だが内部の振動重りを回転させることで本体そのものを回転させる。言葉で説明するのが難しく、動画があったので紹介しておきます。
MASCOT紹介動画↓
はやぶさ2ミッションとMASCOT小惑星着陸機 - YouTube
小型ローバーについてまとめてみるとこんな感じになる。
・名称/機数/分離日時/移動方法/電源
・MINERVA-II1/2機(Rover-1AおよびRover-1B)/2018年9月21日13時06分(JST)/モーター回転によるホッピング/太陽電池
・MASCOT/1機/2018年10月2日~4日(予定)/重り付き回転アーム/バッテリー(リチウム電池)
・MINERVA-Ⅱ2(詳細調査中)
移動方法だけでも様々な機構があるんですね。
MINERVA-Ⅱ1、MINERVA-Ⅱ2、MASCOT共に今後の活躍を祈ります。また今後、どんな写真を見せてくれるのか興味はつきないですね。
関連の過去記事↓
はやぶさ2がリュウグウ到着
はやぶさ2が2018年6月27日、無事にリュウグウに到着した。一介の宇宙好きとして嬉しいニュースをありがとうございます。お祝い申し上げます。
面白かったのは、その形で、結構話題になっているようだ。コマ型、そろばんの玉、ピラミッドを二つ合わせた形、蛍石などなど、色々な物に例えられている。
実際の形はこちら。
写真.はやぶさ2が距離約20kmから撮影したリュウグウ
(JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研)
なぜこんな形になったのだろうか。どうやらリュウグウ自身の自転によって赤道付近にレゴリスが集まったのではないかと言われている。
リュウグウの直径は約900m。そんな小さな小惑星を地球から見つけ、そこへ向かって飛んでいけるとは本当に驚きだ。また、表面には大小様々な大きさな岩が100個以上散らばっているらしい。
こんな面白いトピックスもあった。Queenのギタリスト、ブライアン・メイさんがリュウグウを立体視できる画像を作ったとのこと。
実は彼は天文学者でもあるらしく、ロンドンのインペリアル・カレッジで天体物理学の博士の学位も取得しているとのこと。コインでギターを弾く天才ギタリスト以外の顔も持っているとは脱帽です。
JAXAの紹介記事「ブライアン・メイさんによる小惑星リュウグウのステレオ視画像」↓
Ryugu in glorious stereo for the first time ever ! For more details visit JAXA - or Bri's soapbox ! Or my IG - brianmayforreal - Bri pic.twitter.com/8vKL9CJF0O
— Dr. Brian May (@DrBrianMay) June 27, 2018
はやぶさ2のミッションはこれからいよいよ本番だ。引き続き注目していきたい。
はやぶさ2の目的地小惑星Ryuguが見えてきた。早ければ来月にも到着!
■はやぶさ2の現在
注目している事の一つであるはやぶさ2にこんなニュースがあった。
「はやぶさ2」小惑星撮影に成功 エンジン好調で2カ月後にも到着へ (1/3) - ITmedia NEWS
はやぶさ2は順調に航行しているようで、目的地である小惑星Ryugu(りゅうぐう)の直接撮影に成功した。おめでとう!「はや2」。
現在は、地球軌道からRyuguの軌道に移るtransferフェーズということだ。
■はやぶさ2の目的は?
直接的な目的としては、先の「はやぶさ」と同じで小惑星の一部を持って帰ってくることだ。なぜ持ち帰るのか。簡単に言うと、持ち帰ったサンプルを調べることで太陽系ひいては宇宙の生い立ちや生命の起源につながる研究に役立てようというものだ。
■もしも何らかの発見があったとしたら
仮にRyuguに生命の痕跡が見つかったとしよう。例えば、何らかの有機物やアミノ酸の痕跡があったとする。すると、これは何を示しているのだろうか。
Ryuguは太陽系の中の小惑星の一つである。太陽系の中の小惑星と惑星の一つである地球に生命(もしくは生命の痕跡)があるということになる。つまり、太陽系の中ではあまねくどこでも生命が発現する可能性があるということになる。生命の種は太陽系の至る所にあり、たまたま地球が生命が生まれ進化するのに最も最適な環境であったというように考えられないだろうか。
ここで少しスケールを大きくして銀河系全体として考えてみる。
銀河系の中に太陽系はある。銀河系の中の恒星の数は2000億個と言われている。つまり、恒星系が2000億個あるということになる。
太陽系で起こったことは他の恒星系でも起こり得るのだろうか。または、太陽系だけが特別なのだろうか。
太陽系のみが特別でないとするならば、他の恒星系にも生命を宿す可能性は十分にあるということにならないだろうか..
イメージ.銀河系(引用元:NASA/JPL-Caltech/ESO/R. Hurt)
太陽系は真ん中下辺りのSUNと書いてあるところ
■はやぶさ2のRyugu到着予定日
順調にいけば、早ければもう来月(2018年6月末)にはRyuguに到着するとのこと。その後、1年半ほどRyuguに滞在し、2019年末にRyuguを出発、再び地球への帰還の旅に出る。そして2020年末には地球に帰還予定。竜宮城まで浦島太郎を乗せていった亀のようにはやぶさ2も無事に帰ってくることを楽しみに待っていたい。その時、持って帰ってきた玉手箱には煙だけでなく、本当のお宝が入っていてほしいと祈っている。
過去にはやぶさ2について書いたブログはこちら↓
はやぶさ2やあかつきのおめでたい話 - 宇宙や生命について考えたことを書いてみる
「あけぼの」運用終了とか「はやぶさ2」の1回目の軌道修正完了とか - 宇宙や生命について考えたことを書いてみる
はやぶさ2打ち上げ成功! - 宇宙や生命について考えたことを書いてみる
はやぶさ2(その1) - 宇宙や生命について考えたことを書いてみる
はやぶさ2の状況がリアルタイムでわかる「はや2NOW(Haya2NOW)」のサイト↓ 現在の運用の様子が見られるらしい。
Haya2NOW
サイトの見方の説明↓
「はや2NOW」公開| トピックス | JAXA はやぶさ2プロジェクト
はやツー君twitter
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はやぶさ2情報(JAXA)twitter
生物の定義について考えてみた
■「生物」とは何か。
「生物」とは何かを考えてみた。ちなみに「生命」ではない。「生物」と「生命」の違いについては今回のポイントではないのでまたの機会にでも。今回は「生物」の定義についてである。
生物の定義について昔教わったかもしれないが、すっかり忘れているのと、ひと昔前なのでその間に新たな発見があり定義も変わっているかもしれないので、色々調べてみた。すると、現在では以下の4つを定義として上げているところが多いようである。
1.外部との明確な境界があること・・・(細胞)
2.外部から物質を取り入れ内部で化学反応を行うこと・・・(代謝)
3.自己複製すること・・・(遺伝子、遺伝情報)
4.自身の内部の環境を維持すること・・・(恒常性、自己修復)
各条件の後ろに()書きで付けたのは、その条件を表すキーワードである。
この4つ以外の条件を上げるとするならば、生長(成長)することや、外部環境の変化に合わせて進化していくこともあると思う。ここでいう進化は、個々の個体が進化するという意味ではなく、何世代も子孫を作るうちに起こる変化のことである。
なので、5番目の条件として、
5.生長・成長や進化すること
を敢えて上げてみたい。
何年か前に、ドラえもんが生物であるか否かの論争があったらしい。きっかけは2013年2月に実施されたとある中学入試の問題だった。
「『ドラえもん』が生物として認められることはできないことを理由をあげて説明せよ。」
という趣旨の問題が出題されたのに端を発し、ネット上でも様々な議論が展開された。
これもよくよく問題の背景を調べてみると、その問題はその前段で生物の定義がいくつか上げられていて、それを引用して生物でないことを説明すればよい問題であったようだ。
この問題の解答だが、「ドラえもんは成長しないし、また子を作らないため生物ではない。」という趣旨を記載すれば正解だったようだ。
■どの条件が最も生物の核心をついているか
さて、5つの条件のうち、どれが最も生物を生物たらしめる条件なのか。
改めて5つ並べてみる。
1.外部との明確な境界があること・・・(細胞)
2.外部から物質を取り入れ内部で化学反応を行うこと・・・(代謝)
3.自己複製すること・・・(遺伝子、遺伝情報)
4.自身の内部の環境を維持すること・・・(恒常性、自己修復)
5.生長・成長や進化すること・・・(成長、進化)
僕が思うに3番の「遺伝情報を持っていて自己複製すること」が最も核心をついているのではないかと考えている。
1番の条件は、生物の条件というよりある一つの物体であるための条件であるし、2、4、5番の条件は、仮にその条件を満たさなかったとしても生物であることはあり得る。細かく書くと長くなりそうなので割愛する。
3番の条件をさらに突き詰めると「遺伝情報を持っていること」が核心ではないかと思う。
生物の条件を端的に一言でいうならば、
・遺伝情報を持っていること
だと言える。シンプルで分かりやすくないだろうか。
ところで、地球上の生物の場合、この遺伝情報をどこに持っているかというと、遺伝子すなわちDNA(注1)である。よくよく考えてみると遺伝情報を保持するためにDNAは必須なのだろうか。DNA以外の状態で遺伝情報を持つことはできないのだろうか。
ちなみに、ヒトのDNAの情報量はどれくらいだろうか。ヒトのDNAに使われる塩基は4種類あり、全部で30億塩基対と言われている。これを2進数で計算すると、750Mbyteとなる。CD-ROM1枚に入る情報量である。
地球上の生物は全てDNAを持っている。もし、DNA以外の形で遺伝情報をもつものがいたとするならば、それは生物なのかそうでないのか。もしかすると、広い宇宙の中には、DNA以外何らかの状態で遺伝情報を持ったものがいるかもしれないと考えると怖いような楽しいような気がする。
(注1)厳密に言うと、遺伝子とDNAは別物である。DNAの中の一部に遺伝子がある。
以下に言葉の定義を整理したものを記載する。
[言葉の定義]
染色体:DNAが巻き付いた棒状の固まり。細胞の中にある。
DNA:デオキシリボ核酸という物質。Deoxyribo nucleic acidの略。二重らせん構造をとる。
遺伝子:DNAの中で、遺伝情報をもっている部分。
遺伝情報:生物をつくるための設計図のような情報そのもののこと。
ゲノム:遺伝情報の全体。遺伝子が持っている情報に着目した言葉。
地球外文明の数について考えてみる(続)
改めて地球外文明数について少し考えてみた。
過去にドレイクの方程式について書いたブログはこちら。
以下は上記ブログからの抜粋になる。
ドレイクの方程式は、単純な掛け算で表される。少しパラメータの数が多いだけだ。
様々なパラメータを掛け合わせることで、最終的に、銀河系に存在する通信可能な地球外文明の数(N)が求められる。
ドレイクの方程式N :我々の銀河系に存在する通信可能な地球外文明の数
R* :我々の銀河系で恒星が形成される速さ(銀河系内で年間当たりに発生する星の数)
fp :惑星系を有する恒星の割合
ne :ひとつの恒星系で生命の存在が可能となる範囲にある惑星の平均数
fl :上記の惑星で生命が実際に発生する割合
fi :発生した生命が知的生命体にまで進化する割合
fc :その知的生命体が星間通信を行う割合
L :星間通信を行うような文明の推定存続期間この式を提案したドレイク博士自身は、どういう値を入れているのか気になっていたところ、コズミックフロント・ネクスト(NHK BS、H28年4月7日放送)の中で、ドレイク博士自らが計算していた。
http://www.nhk.or.jp/cosmic/broadcast/160407.html博士が入れていた値は以下のようなものだった。
R* :20
fp :0.5
ne :2
fl :1
fi :1
fc :1
L :1000これらの値を入れると、銀河系内の地球外文明の数(N)20,000が出てくる。
ここで改めて各パラメータの値を具体的に見てみる。
すると、
fi :1
というのが気になってくる。ここが1になるということはすなわち、ある惑星に生命が発生したら必ず知的生命体にまで進化することになる。地球においてはそうかもしれないが、果たして他の惑星においても当てはまるのだろうか。アメーバのような原始生命体が発生したとしても、あまりに過酷な環境であればその生命体は知的生命体にまで進化できるだろうか。近くの恒星からの熱、放射線やもしくは惑星そのものが持っている資源の枯渇、また隕石の衝突など様々な阻害要因が考えられる。
また、
L :1000
についてはどうだろうか。この値は、星間通信を行うような文明の推定存続期間が1000年であることを示している。星間通信を行うような文明になったとしても平均1000年程度で滅んでしまうとドレイク博士は考えているのかもしれない。
星間通信を行えるだけの技術力を持っていながら、実際には行わないということもあるだろう。自らの意志で星間通信を行わない生命体もいるかもしれない。生前のホーキング博士も言っていた。むやみに宇宙へ向かって発信すべきでないと。相手が何を考え、どういう行動を取るか分からないにも関わらずこちらから情報を発信するのは危険であると博士は考えていたようだ。ネット上で誰が見ているのか分からないのに自分の居場所を知らせるのは危険だ。それと同様かもしれない。そんな理由で星間通信を行わない文明もあるかもしれない。
上記2点を鑑みてfiとLのパラメータ値を以下のように変えて計算してみる。
fi :0.01
L :10000
これらの値を入れて、銀河系内の地球外文明の数(N)を計算してみると2,000となった。ドレイク博士自身の計算より1桁小さくなった。
この値を大きいと見るか、小さいと見るか。1桁小さくなったといっても2,000である。地球以外にも文明があるのではないだろうか。
ホーキング博士の研究により宇宙や地球外知的生命体の謎の解明が大きく進んだことは間違いない。今後も第2、第3のホーキングが生まれ、宇宙の解明が進んでいくだろう。
(追記)
2018年3月14日、スティーブン・ホーキング博士が亡くなりました。ここに謹んで哀悼の意を表します。